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内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)

1.内分泌かく乱化学物質とは

 内分泌かく乱化学物質は環境ホルモンとも呼ばれ、次のように定義されています。

動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質 環境ホルモン戦略計画SPEED'98=1998年・環境庁

 内分泌かく乱化学物質は、その名の通り、人や野生生物の内分泌作用をかく乱し、生殖機能障害、悪性腫瘍等を引き起こす可能性がある物質等の総称です。
 環境汚染の実態や生体内での作用機序については科学的に未解明な点が多いものの、生物の世代を超えた影響をもたらすおそれの指摘もあり、環境保全上の重要課題となっています。

 
これまでに、巻貝、魚類、爬虫類、鳥類といった野生生物の生殖腺異常や生殖機能異常、生殖行動異常、雄の雌性化や雌の雄性化、免疫系や神経系への影響等が報告されています。


2.環境科学研究所のこれまでの研究成果

  東京都環境科学研究所は、平成10年度から環境ホルモンに関する様々な研究を行っています。これまでの研究の結果、以下のことが明らかになりました

(1) 魚類への影響
 多摩川を中心に、都内河川における魚類の生殖異変の実態と原因物質とされる内分泌かく乱化学物質の特定、その物質の河川中での挙動と下水処理場からの排出実態等について調査を行った。その結果、以下のことが確認された。

 
ア 多摩川のコイの雌雄比はほぼ1:1であり、
   雌が著しく多いという性比の偏りは認められなかった。
 イ 一部の雄コイの血液には、雌特有タンパク前駆物質(*)が高濃度に検出された。
     *:ビテロゲニン=vitellogenin という。
 ウ 雄コイの約1割に精巣異常がみられた。

 このうち、イについてさらに調査研究を進めた結果

 
ア 雄コイにビテロゲニンを産生させる可能性の高い物質は
   天然エストロゲン(女性ホルモン)であった。
 イ エストロゲンは、そのほとんどが下水処理場からの排出である。

ということがわかった。

投網による魚類の採取作業写真
投網による魚類の採取作業(高浜運河:港区)
採取した船上のボラの写真
採取したボラ(このあと、血液の採取等を行う)

平成14年度から行っている、都内海域の魚類調査及びメダカを用いての室内暴露実験では、以下のことがわかった。

  ア ボラ、コノシロ等に精巣卵(*)があるものが認められた。
      *:精巣に存在する卵細胞。通常、雄では見られない。
  イ 下水処理水を濃縮した水によるメダカの飼育で、
    雄メダカが雌に性転換したことが確認された。

 イの事実から、メダカの雄から雌への性転換は、下水処理水中の天然エストロゲンの作用により誘導されたと考えられる。

正常なボラの精巣 正常なボラの精巣の写真
異常なボラの精巣

(精巣内に、
卵母細胞=精巣卵がある)
異常なボラの精巣の写真

(2) 水環境中でのエストロゲンの消失
 
多摩川において、上流域(羽村市)から下流域(大田区)までのエストロゲン収支を調査した。
 その結果、下水処理場から排出されたエストロゲンの60〜80%が消失していることが分かった。

消失率は季節によって変動し、水温が高いほど、消失率が大きくなった。

エストロゲンの大半が、河川を流下する過程で消失するのはどのような機構によるものかを解明するため、
  ・河川の詳細な縦断調査
  ・模擬河川水路を用意し、室内実験での河川水の流下の再現
を行い、エストロゲンの挙動を調べた。

 その結果、河川におけるエストロゲンの消失は、主に川底の石に付着した微生物の分解によるものと推測された。



環境科学研究所年報掲載論文
2005年 
 都内水域の環境ホルモンに関する研究(その4)-東京湾に生息する魚類の精巣卵とボラのビテロゲニン-(PDF3296K)
  都内水域の環境ホルモンに関する研究(その5)-下水処理水の流入による魚類生殖腺への影響-(PDF3296K)

 都内水域の水環境における内分泌かく乱物質の汚染実態(PDF3296K)
2004年
 都内水域の環境ホルモンに関する研究(その3)-東京都内湾の魚類の生殖異変とエストロゲンの流入負荷量-(PDF597K)

2003年
 都内水域の環境ホルモン問題に関する研究(その1 )(PDF615K):東京都内湾の魚類調査
 都内水域の環境ホルモン問題に関する研究(その2 )(PDF380K):河川におけるエストロゲンの消失の機構

2002年
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その8 )(PDF1098K):都内河川におけるコイの精巣等の調査(総まとめ)
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その9 )(PDF1296K):都内河川におけるコイ等にみられた卵巣異常の実態と雌雄の生殖腺異常の比較(総まとめ)
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その10)(PDF842K):内分泌かく乱化学物質の多摩川縦断変化
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その11)(PDF785K):下水処理場におけるエストロジェンの収支
 下水処理水へ曝露したメダカ雄のビテロジェニン誘導(PDF634K)
 下水処理水中の化学物質がメダカに及ぼす影響(PDF736K)


2001年
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その4)(PDF1417K):都内河川におけるコイの精巣等の調査
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その5)(PDF1255K):都内河川におけるコイ等にみられた卵巣異常の実態と雌雄の生殖腺異常の比較
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その6)(PDF975K):内分泌かく乱化学物質の河川縦断変化
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その7)(PDF861K):下水処理場の内分泌かく乱化学物質の排出実態
 雄コイのビテロジェニン量につい て(PDF521K)
 河川水及び下水処理排水中の非イオン界面活性剤のエチレンオキシド鎖長別組成につい て(PDF480K)
 メダカFLF系統雄の雌化に及ぼす17βエストラジオールの暴露時期及び期間の影響(PDF514K)
 HPLCによるエストロゲンとビスフェノールAの一斉分析法の検討(PDF801K)

2000年
 化学物質がメダカの繁殖能力に及ぼす影響(PDF308K)
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その2)(PDF1325k):都内河川におけるコイの精巣等の調査
 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その3)(PDF558K):エストロジェン様物質の総量測定法

1999年

 多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究(その1)(PDF287K):都内河川におけるコイの精巣の調査について


他誌発表論文

 和波一夫:多摩川のコイのメス化問題について,都薬雑誌,1(7),pp.40-44(2002)
 和波一夫、嶋津暉之、宮下雄博:都内河川の環境ホルモン問題に関する研究,全国環境研会誌,pp.179-185(2002)


講演会に使用したパワーポイント原稿pdf)

 2001年1月公開研究発表 会(PDF670K)(多摩川等の環境ホルモン問題に関する研究)
 2002年1月公開研究発表 会(PDF287K)(内分泌かく乱化学物質の影響を実験室で調べる)
 2003年1月公開研究発表会(PDF406K)(「環境ホルモンを計る」−女性ホルモンと化学物質−)
 2005年1月公開研究発表 会(PDF1375K)(魚のメス化と環境ホルモンの影響)


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<参考資料>


1.東京都の取組み
  東京都は、平成10年7月に「東京都環境ホルモン取組方針」をとりまとめ、調査研究を進めています。
 都内の環境調査、下水道や水道施設の調査、食器からの溶出、食品中の残留調査等を実施し、環境ホルモンと疑われている物質の濃度等の結果を公表しています。リンク先のあるものは、プレス発表資料です。

平成15年度
 東京都河川・内湾の内分泌かく乱化学物質調査結果  環境局 [H15. 6.17]
 (トリブチルスズ等8物質及び関連物質4物質に関する河川10地点及び内湾3地点の調査結果)

平成14年度
 環境保健対策専門委化学物質保健対策分科会の開催結果   健康局 [H14. 7.26]
  
平成13年度 東京都内湾における魚貝類の内分泌かく乱化学物質調査結果
  平成13年度飲用井戸等の内分泌かく乱化学物質に関する実態調査結果
  化学物質による曝露リスク対策について

平成13年度
 内湾の内分泌かく乱化学物質調査結果  環境局 [H14. 3.28]
 (河川14地点、内湾3地点における32物質に関する調査結果)

 環境保健対策専門委員会化学物質保健対策分科会結果  衛生局 [H14. 3.26]
  平成12年度 内分泌かく乱化学物質の観点から見た流通魚介類の実態調査結果
  合成樹脂製器具・容器等に含まれる内分泌かく乱化学物質に関する実態調査結果
  下水道における内分泌かく乱化学物質に係る実態調査結果
 下水道における内分泌かく乱化学物質の実態調査結果  下水道局 [H13. 8.14]
 (アルキルフェノール類等7物質に関する調査結果
 環境保健対策専門委員会化学物質保健対策分科会の結果  衛生局 [H13. 8. 6]
   平成12年度 東京都内湾における魚貝類の内分泌かく乱化学物質調査結果
  平成12年度 飲用井戸水等の内分泌かく乱化学物質に関する実態調査結果
  平成12年度 室内環境中の内分泌かく化学物質の実態調査結果
 水道水等における内分泌かく乱化学物質の実態調査結果  水道局[H13. 8. 2]
 (都内12浄水場の原水と浄水に関する調査結果)
 SD・STの環境ホルモン作用に関する研究論文の発表  衛生局 [H13. 7. 2]

平成12年度
 東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の開催結果  環境局、衛生局 [H13. 3.27]
  東京都河川・内湾の内分泌かく乱化学物質調査結果
  農産物中の残留農薬実態調査結果
  ポリ塩化ビニル製ラップフィルムの追加試験結果
  ポリカーボネート製ほ乳びんの代替素材におけるビスフェノールAの溶出試験結果
 東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の開催結果  環境局、衛生局 [H12.10.13]
   おもちゃ等に含まれる内分泌かく乱化学物質に関する実態調査結果
 
 11年度 多摩川等のコイの精巣等の調査研究結果
 東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の開催結果   環境局、衛生局
[H12. 8. 2]
  内分泌かく乱化学物質の観点から見た流通魚介類の実態調査結果について
  東京都内大気中の内分泌かく乱化学物質に関する実態調査結果について

  室内環境中の内分泌かく乱化学物質の実態調査結果について
 東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の開催結果
  環境局、衛生局水道局、下水道局 [H12. 6.27]
  水道水等の内分泌かく乱化学物質に関する実態調査結果
  飲用井戸等の内分泌かく乱化学物質の実態調査結果
  下水道における内分泌かく乱化学物質の実態調査結果
  ラップフィルムに含まれる内分泌かく乱化学物質の調査


平成11年度
 東京都杉並中継所に係る環境調査について  東京都清掃局 [H12. 3.28]
 (不燃ごみとして中継所に搬入される可能性がある環境ホルモンの調査結果)
 東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の開催結果  環境保全局、衛生局 [H12. 3.27]
  平成11年度 東京都河川・内湾の内分泌かく乱化学物質調査結果
  平成11年度 東京都内地下水中の内分泌かく乱化学物質調査結果について
  平成11年度 東京都内湾における魚貝類の内分泌かく乱化学物質調査結果
 東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の結果について  環境保全局、衛生局 [H12. 3. 3]
  ポリスチレン製器具・容器等の実態調査結果について
  農産物中の残留農薬の実態調査結果について
  ポリカーボネート製ほ乳びんの追加試験結果について
 東京都内分泌かく乱化学物質専門家会議の結果について  環境保全局、衛生局 [H11. 5.31]
  東京都河川・内湾の内分泌かく乱化学物質環境残留状況調査結果について
  魚貝類の内分泌かく乱化学物質汚染状況調査結果について
  下水道における内分泌かく乱化学物質の実態調査結果について
  東京都内大気中の内分泌かく乱化学物質の調査結果について
 平成10年度 東京都内大気中の内分泌かく乱化学物質の調査結果について(概要) 環境保全局 [H11. 5.31]

平成10年度
 ポリカーボネート製ほ乳びんのビスフェノールA溶出実態調査結果  東京都衛生局 [H11. 3.24]
 (ポリカーボネート製ほ乳びん5品目42検体の調査結果)
 給食用ポリカーボネート製食器の実態調査結果  東京都衛生局 [H10.12.22]
 (給食施設で使用されているポリカーボネート製食器7種24品目に関するビスフェノールAの溶出試験結果)
 平成10年度 下水道における内分泌かく乱化学物質実態調査結果  東京都下水道局 [H11. 5.31]
 
平成10年度 東京都内大気中の内分泌かく乱化学物質調査結果  東京都環境保全局 [H11. 5.31]
 
平成10年度 東京都河川・内湾の内分泌かく乱化学物質環境汚染状況調査結果
 平成10年度 東京都杉並中継所に係る環境調査結果  東京都清掃局 [H10.12.21]
 


.国の取り組み

 環境省は、「環境ホルモン戦略計画 SPEED'98」掲載の内分泌攪乱作用が疑われる物質について、平成12年度からのミレニアムプロジェクトにより、優先順位の高いものから、順次、有害性評価を行っています。
 平成12年度に12物質、平成13年度に8物質を選定し、人の健康及び生態系への影響を評価するための動物実験(哺乳類、魚類)と試験管内試験を実施しました。
 結果は、いずれの物質についても、低用量(文献情報等により得られた人推定暴露量を考慮した比較的低濃度)での明らかな内分泌攪乱作用は認められませんでした。

 生態系影響(魚類)に関する有害性評価の結果からは、ノニルフェノールと4-オクチルフェノール
(工業用洗剤由来の物質)が魚類に対して内分泌攪乱作用を有することが確認されましたが、国内の環境水中濃度からみて、魚類への内分泌攪乱作用に関するリスクは低いと考えられています。

 国土交通省は、全国の一級河川の水質、底質調査を行い、「水環境における内分泌かく乱物質に関する実態調査結果」を公表しています。

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